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1章「精霊の森」

主人公・フィリアとその従者ヴィレムは、フィリアの夢の中に出てくる不思議な場所を求めて旅をしている。
次の目的地は、精霊の森フォレルの森の南東にある、『花の街〈フルール〉』だ。


 花の街を目指して旅を続けるフィリアとヴィレム。その先で、昨日絡まれた盗賊たちが他の旅人と接触しているのを発見した。

「おや、あの方々は昨日の……」
「わぁ、昨日の盗賊さん。あの方……絡まれてる……大丈夫かな?ヴィレム?」
「如何なさいますか? 助けましょうか?」
「うん、答えはひとつです」
「そう仰ると思っていましたよ」

 フィリアは決まって目の前で困っている人を助ける。それを誰よりも近くで見てきたヴィレムは、期待通りの返事に笑みを送る。

 盗賊に絡まれている青年は、白髪で毛先が紅色の風変わりの青年だった。細身の長身で、茶色の長いコートを着ており、手にはトランクバックを持っている。程よく声が高いため、盗賊も狙いを定めたのかもしれない。

「よォ……そこの兄ちゃん。お前アレだろ、最近よく聞くレンチン術師」
「レンチン? そんな術は聞いたことないけどなぁ」
「そんなハズはねぇなァ。金たくさん持ってんだろ、さっさと寄越しな、それとも作ってくれていいんだぜ」

 青年に絡む盗賊は、昨日フィリア達に絡んできたスキンヘッドの男性だった。自身の首を90度傾げて、青年の顔を覗き込む。短気な人ならしつこくて殴りそうだ。

「あいにく、お金を作ることは罪に値しますので遠慮します」

 青年が絡まれている間に、フィリアとヴィレムは茂みから盗賊に近づき、フィリアは魔法銃『雪の精〈ヴァルスドゥネージュ〉』で、青年にだる絡みする盗賊を狙撃した。

「……まずは1人……!」

「うわぁぁつ!? なっなんだ?? 足元が!!」
盗賊は凍りつく足元に気を取られている。

「そちらの旅人さん、お怪我はありませんか?」
フィリアは盗賊の足を取ったことで前に出るー

「あっ!! そこの君!! 今すぐその場から離れて!」
「えっ??」
「フィリア様!!」

 青年はフィリアに向かって離れるように言い放った。ヴィレムが咄嗟にフィリアを抱え後ろに下がると、フィリアが元いた足元から一瞬で大きな炎が燃え上がった。

「……危なかった…… 良かった……」

「一体なんなんだよ⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎ おっお前らは昨日の……… クソっ……ずらかるぞ!」
 フィリアとヴィレムの姿、青年の高火力な炎魔法を目の当たりにし、盗賊は焦りながら去っていった。

「もう来ないでね〜 はぁ… そうだ、君たち大丈夫かい??」
青年は盗賊に手を振って、フィリア達の元へと駆け寄ってきた。

「えっええ大丈夫です!」
「良かった…… 今朝から付きまとわられてて、面倒で罠をしかけてたんだけど…… まさか、君がかかってしまうとは思わなくて…… 本当にごめんなさい」
青年は頭を下げて謝ってきた。

「ボクこそすみません。囲まれていたので窮地かと……」
「あはは…… そこの茶髪の君も、とてもいい身のこなし方だった。君がいて救われたよ…… ありがとう」
「いいえお気になさらず」
ヴィレムはあっさりと、答えた。最も主を守るのが従者の役目だからこそ、当然のように答えたのかもしれないが。

「君たちも旅人かな? 申し遅れたけど…… 僕はアルト。化学者と錬金術師をしているよ。今は理由あって旅をしている。君達は…?」
「ボクはフィリア。こちらは従者のヴィレムです。おっしゃる通り旅をしています」
「ご紹介にあずかりました、ヴィレムと申します。彼の従者をさせていただいております。」
ヴィレムは胸に手を当ててお辞儀をした。

「ご丁寧にありがとうございます。……えと、もしかして貴族の方でしょうか……」
「かしこまらなくていいですよ。普通に話してください。」
アルトはヴィレムの礼儀作法を見て何かを察したようだった。その為、無礼はないか少し焦ったようだ。

「アルト…… 錬金術師…… はて、何処かで聞いたような…… もしかして、最近、巷で有名なあの錬金術師のアルフレッド様では?」
「あはは…… 有名なのかな?」
アルトは頭を手に当てて、苦笑いをしている。

「やはりですか、なんでもその若さにして天才と謳われる稀代の……」
「わああ!! はっ恥ずかしいからストップ!!///」
「…失敬」
アルトは恥ずかしそうにヴィレムの口を止めた。

「ごめんね、恥ずかしくて……あはは」
「ボクも聞いた事あります。まさか本人に会えるとは思っていませんでした…!」

 錬金術師のアルト。本名はアルフレッド=テオフラス。西の国では有名な若者で、西の国の南東にある街『魔術都市〈ウィラード〉』にある魔術学校を首席で卒業し、その後は北の国の化学と魔術を掛け合わせた独自の魔術や、西の国では珍しい錬金術を駆使する若き天才だ。

「さっきの炎魔法。凄かったです…!」
「ふふ、あれはね、地雷式の炎魔法なんだ。この間考えたばかりの新しい魔術さ!」
2人は楽しそうに魔術の話を始めた。
「わわ、新しい魔法⁉︎ 流石アルトさんですね! でもどう言う原理で…? 足を踏み入れたら発動するって……」
「フィーくんは目の付け所が良いね。あれはね、命令式が二段階になっているんだ。僕の周りに一段階目の解析用の魔方陣を展開して、周辺に二段階目の魔法陣を無数に配置、盗賊さんが複数人で行動しているのを知ってたから、仲間を呼び入れた時に発動するようにしてあるんだ」

 アルトは得意げに語り出した。フィリアはとても勉強熱心な気質で、自分が知らないことになると、とても興味津々に話を聞いたり聞き出そうとする癖があった。そういう意味では、フィリアもアルトも馬が合うかもしれない。

「あ! ごめん、つい魔術になると語っちゃうんだよねえ…… ところで2人はどこに向かってるんだい?」
「ヴィレム、教えてもいいかな」
フィリアは素性を明かせないため、念を持ってヴィレムに確認をとる。

「はい。彼なら問題ないかと」
「良かった! ボク達は花の街のフルールを目指しています。アルトさんは…?」
「僕は、港町グランツ。探している医者がいるんだ」
「お医者さん……? そうだったのですね」

「そうだ! ここで出会ったのも何かの縁、ご一緒してもいいかな? 僕が目指しているグランツは、フルールの先になるし…… フルールには沢山、薬草店もあるから僕も見に行きたいなって」
「わぁ! 名案です。ボク、アルトさんとお話したかったんです。いいかな……ヴィレム!」
フィリアは嬉しそうだった。そして瞳を輝かせヴィレムに問いかける。

「そうですね。道中、アルト様に彼の旅の話や、錬金術の話を聞いてはいかがでしょう?」
「! アルトさん、是非ご一緒しましょう! 貴方のお話…… とても聞きたいです!」
興味津々、満面の笑みで答えるフィリア。その喜びようはどこか子供のように見えた。そんな姿をヴィレムは、まるで親のような視線で見守っていた。

「僕の話で良ければ、いくらでも」
アルトも笑顔で答える。
「わぁ! ふふふ、道中楽しくなりそうです!」
「それは良かった! これからよろしくね2人とも」
アルトはフィリアとヴィレムに手を差し伸べる。そして、2人と握手を交わした。

 フィリアとヴィレムは、新しい旅の仲間アルトを加えて、フルールへと向かうのであった。